「車の自動運転」を考える

みんなの未来構想

(社)未来構想PF 会長

山本 卓朗

自動車の自動運転については、国際競争も念頭において、政府が積極的に推進すべく体制を強化していることもあり、昨今多くの取り組みが報道されるようになっています。交通に関わらず、「自動的にものを動かす」ということは、いわば人類の夢であり、太古の昔から多くの智恵者によってトライされてきました。お祭りで楽しむ伝統文化のからくり人形も人形を自在に動かしたいという夢の実現です。
近代の実業の世界を自動化に駆り立ててきた動機は、まずは利便性・省力化・安全でしょうか。昨今は、どの事業にとっても安全は重要な課題ですが、特に交通事業者にとっては事業の根幹をなすものです。そして最大の元凶であるヒューマンエラーを無くすために、人が介在する過程を極力なくす努力を続けてきました。そのことは結果として省力化に繋がるわけで、皮肉にも多くの労働争議になってきました。

さて車の自動運転に関連して取り上げられるテーマには、プロのドライバー不足、高齢ドライバーの増加、高速道路の隊列走行、過疎地域の住民の足、超小型車の開発、安全補完装置、ディマンドバスやタクシー、シェアー利用、高齢者の免許返上、生活用品の配達などキリがありません。そして自動化の狙いやもたらす効果はテーマによって多様であり、それが故に議論が拡散して、よく理解出来なくなったりします。私などは、年を取って免許の返上が目前に控えていますので、限定した地域内の移動のために、完全自動化でなくても、免許なしで乗れる安全なミニカー開発の議論を優先して欲しいと思います。

一方鉄道交通でも、当然ながら自動運転技術は進歩を重ねていますが、自動化と言う切り口での広範な議論が、専門技術者の枠を越えてなされてこなかったような気がします。車の自動運転に関しては、高速道路での隊列走行や過疎地域でのアクセス交通の確保などの実証実験が始まっています。そして車の自動運転の動向は、やがて鉄道交通に様々な影響を及ぼしてくると思われます。

この春から筆者の関係している交通協会の研究委員会で、「陸上交通(道路・鉄道)の自動運転の動向について」を集中的に取り上げて、広く皆さんにお伝えしていこうという試みを始めています。インターネット上にも多くの情報がありますので、是非皆さんに未来の交通の夢を掻き立てていただければと思います。