シニア人材の活用にもう少し知恵がないか

ひと

(社)未来構想PF会長

山本 卓朗

 

何年もいや何十年も前からどこに行っても人手不足の話しを聞いてきたし、最近では建設業の担い手不足など自身でも関わってきました。長時間労働が事件になったりする一方で就職難や余剰人員という話があり、医師過剰時代が来ると聞かされながら病院で長時間待たされたりすると、どの世界も需給のアンバランスを解消する知恵が足りないのかなと思ってしまいます。経営改善のために効率化を推進してIT 化を進め人件費を削っていく、このことは良く判りますが、窓口の無人化はサービス水準を低下させる場合もあり、わずかなベテラン補助員の配置でお客様の不満解消に繋がることもあるでしょう。
JR の指定券券売機、空港の自動チェックイン機、病院の支払い機、最近ではシネコンの指定券売機まで、次々とボタンを押すことになるので慣れない年寄りなどがかなり当惑しているようです。私など飛行機利用が少ない者には、自動チェックイン機付近にサービス員が配置されていて、すばやくアシストしてくれると急ぎの時などホッとします。

現職をひいてから小さな法人である未来構想PF とシビルNPO 連携PF に身を置いて、アクティブシニア活動の場を模索していますが、これが結構難しい。雇う側からすると、週三日など非常勤雇用、IT 機器取扱能力、若い社員との融和、経験能力の偏りなどの課題があって、自由度のある若手派遣社員を選択しがちです。土木学会ではかなり以前に、土木技術者登録制度を設けて、求人側からのオファーがあった時は検索して紹介するマッチングシステムを構築しましたが不発に終わったし、東日本大震災の折に、被災自治体から人材不足の声が高まったので、依頼に応えるべく受け皿を公表した時も不発に終わりました。専門技術者を紹介するシステムは、頭で考えるほど容易ではないことがわかります。現実は不特定のリストから選択してお見合いするよりも、縁故で紹介してもらう方が確実で手っ取り早いということだと思います。確かにシニアエンジニアの多くは元気だし、年齢に関わらずオファーがあれば馳せ参ずる気概をお持ちだと思います。かといって暇を持て余しているとか生活費で汲々しているかといえばそうではなく、長年果たせなかった自分の夢を果たすべくカルチャーに通ったり、趣味に打ち込んだり結構忙しくしているのですね。

オリンピック対応も重なり仕事が山積している一方で、団塊世代が抜けて経験不足の若手が大勢を占めるようになったJR のような企業が多くなっていると思います。そういう企業で技術力のバランスを取るために、70 歳を越えつつあるがまだ元気なOB シニア社員をもう一度活用する更なる知恵が欲しいと思います。