東京メトロ 改良建設部長
大石敬司
本年3月、有楽町線延伸豊洲~住吉間、48km及び南北線延伸品川~白金高輪間、25kmの鉄道事業許可を受け、現在、工事着手に向けて各種手続きや設計を行っており、両線とも2030年代半ばの開業を目指すことになった。当社の新線建設は、2008年開業の副都心線以来であり、土木技術者として喜ばしい限りである。
新型コロナの影響による人々の意識・行動や企業活動などの変化を踏まえ、両線の開業時、さらにその数年先を見据えると、本格的なデジタル社会や人口減少社会の到来など、大きな変化が生じていると思われる。駅においては、チケットレス化やノーラッチ化、設備や業務のスリム化などによってはレイアウトに影響を受け、また地下鉄においてもいずれ自動運転が実現するとも考えられ、それらを想定したうえで設計を行うことが求められている。
建設工事にあたっては、騒音・振動、地盤・地下水などの環境保全対策は当然のこと、近年では各社ともカーボンニュートラルの実現に向けた研究開発に取り組んでおり、それらの採用の可否なども検討し、脱炭素社会や循環型社会へ貢献することが求められている。
また、近年では、難度が高く輻輳した工事ほど、BIM/CIMの活用事例が増えており、関係者間の情報共有を容易にでき、生産性の向上につながるとともに、維持管理にも活用することが期待されている。
さらに、有楽町線延伸部については、江東区が今後策定する「沿線まちづくり構想」との連携といった視点を考慮し、駅・まち一体となった空間の構築が望まれると考えている。
南北線延伸の品川駅については、リニア開業や空港アクセス、周辺の大規模開発を含めた交通結節点としての役割が求められ、特に国道デッキ事業とは同時施工となることから共同推進を図る必要がある。このように、両線の建設にあたっては、将来を見据えた便利で快適な魅力ある地下鉄とすべく、官民・地域が一体となって進めていくことが最も重要だと考えている。