令和時代を生きる鉄道土木技術者

ひと

JR東日本 建設工事部長

今井政人

新年あけましておめでとうございます。 JR 東日本入社直後、新人時代の直属の上司であった土井博己さんからトップオピニオンの依頼を頂いた。昭和 63 年に JR 発足一期生として入社し、直轄設計計算、手描きの作図を行っていたことがつい先日のように思い出される。それから 32 年、時代は昭和から平成、令和に変わり昨年 6 月から建設工事部長という職責を与えられた。

この間、当社建設部門の年間工事量は849 億円から 1,415 億円と約 1.7 倍に伸び、今年は、いよいよ東京 2020 オリンピック・パラリンピックに向けた工事の最終年、工事屋にとって正念場の年である。また、オリンピック・パラリンピックが終われば、中央線 12 両化、羽田空港アクセス等の輸送改善施策、品川駅、渋谷駅等の大規模ターミナル改良等のプロジェクトが目白押しである。一方、現在の建設部門は、国鉄分割民営化とその後の採用抑制の影響によ り 45 60 歳の社員が極端に少ない若手社員中心の体制で仕事を進めており、グループ会社等への委託等、いわゆる水平分業の形での業務遂行も増加している。

昭和から平成初期の時代、国鉄をその起源とする当社の土木職場では、他の発注者より直轄業務が多く、自分で手を動かし、経験することで仕事を覚える仕組みが多くあった。直轄線路閉鎖しかり直轄設計しかりである。時間はかかるが自分の手を動かすことにより、仕事を覚え、土木技術者としての能力を向上させる仕組みがあったわけである。

翻って令和時代、前述のように限られた人数で、今まで以上の膨大な工事を実施していくため、直轄作業で自然と仕事を覚える、あるいは、じっくりと現場を見て施工の知識を得るという時間的余裕は確実に減少している。このような中で鉄道土木技術者としてどういう姿を目指すのか?どうやって育てるのか?ということが大きな課題であり、解決に向けて先輩諸氏、私も含めて平成時代から試行錯誤を繰り返してきたが、正解はまだ見つかっていない。

ただ言えることは、人数的にも、働き方改革等により時間的にも制約がある中で、一人前の鉄道土木技術者を育成するためには、①習得すべき技術分野の絞り込みと効 率的な教育の実施 ②育成に充てる時間を生み出すための業務の効率化の2つが必要であるということである。①については、間違いなく必要な技術は、鉄道安全に係る技術、安全に鉄道を運行しながら工事を行うためのハード、ソフトの技術であり、教育については VR 等新しいツールを使った方法が有効である。また、②については、近年、 BIM に代表される ICT の急速な進展により画期的な業務のスリム化が可能となってきており、これを推進すべきである。同時に今までにない発想で思い切って業務を見直し、「やらない仕事」を見つけ出して省くことも重 要である。

令和時代を生きる一人一人の鉄道土木技術者が自らの技術に自信を持ち、新しいプロジェクトに果敢に挑戦していくことを願い、私もその育成の一旦を担いたいと考えている。