大和心(やまとごころ)に触れて

ひと

新宿南エネルギーサービス㈱
代表取締役社長
小林千佳

「(一社)土木技術者女性の会」の有志で古事記の読書会を始めて5年となります。月に1度、土木・女性・技術者という共通点のみで世代も職業も異なる数名が車座になり順番に朗読しています(コロナ禍以降はオンライン開催)。題材としている「新釈古事記伝」には大和心の様々な教えが示されており、参加者と読後感を共有し深く味わっています。天照大御神・須佐之男命・大国主命などの神々が登場するお話しの随所で「大和心」に触れており、幾つかご紹介させて頂きます。
まず「袋背負の心」で大国主命は旅道具の数々を大きな袋に入れて独り背負い、八百万の神々の後を歩みました。大黒様のニコニコ顔で、沢山の人の荷物を背負うことを喜びとし見返りを求めず人のためになることを大切にする文化こそが大和心、と学びます。また、須佐之男命は、父神より命ぜられた現世の開拓(基盤整備)が困難なあまり「泣きいさち」状態となっていたものを、天照大御神の指導などを仰ぎながら「みたま鎮め」をして自らの使命の尊さ・本質を悟ります。自分の私利私欲だけを重んじて使命の本質が見えないと本当の仕事をしたことにならないという教えも大和心に通じます。有名な「おこもり」では、天照大御神を引き出す相談での仕切り役として「思兼神」が活躍します。他の神様が自らの受持ちに執着するなかで調整役に徹し全体を見渡す能力で課題解決を図ろうとする姿も大和心に通じ土木屋の役割とも重なります。
ほんの一例ですがこのように祖先の魂・大和心に触れつつ社会基盤を子孫に受け継いでいくという自分達の受持ちにも気付かされ、参加者で共有しています。SDGsの取組み、DX推進、グローバル化、エネルギー問題など変化が激しい時代に、「故きを温ねて新しきを知る」古事記を味わってみてはいかがでしょうか。
参考文献:「新釈古事記伝(全七巻)」阿部國治著・栗山要編(致知出版社)