日韓トンネル

みんなの未来構想

日韓トンネル技術委員会
竹石峰也

12年ほど前、韓国から元国土統一院長官が来日し、久しく聞かなかった「日韓トンネル構想」の講演があると聞き、海運クラブのホールに出向いた時でした。25年ぶりに会う古い友人に声をかけられました。
古い友人とは、当時一般財団法人国際ハイウェイ財団に勤めておられた方で、後日私を訪ねて来て、大変興味深い依頼をして来ました。
国際ハイウェイ財団が1982年から1990年に渡り、日韓トンネルプロジェクトの地質調査を実施し、全調査データをデジタル化した資料10GB以上があり、長く埋もれていたものですと、さながら古文書のようにその資料を渡され、解読と活用を依頼されたのです。
私は時間をかけ一通り目を通し、その規模の大きさに驚きました。海洋音波探査16654㎞、海洋ボーリング地質調査500m1本、陸上部ボーリング地質調査約500m/本×23本、延長9480m、地表踏査、磁気探査・弾性波探査・水文調査を全域韓国も含むに渡り実施、解析した資料でした(図1)。

特に海洋部の調査では、デジタルマルチチャンネル音波探査を採用し、巨大でかつ安定したパルスを発するウォーターガンを音源とし24チャンネルのマイクロホンで受信し、大量のデータを記録できる調査法で、大型コンピュータで解析し海底下1000m以上の調査・解析も可能な方式です。長崎・佐賀から韓国国境まで全般に渡って実施していました(図2)。しかも、1997年にコンピュータ技術の急進を考慮し、ディジコン社にてマイグレーション処理と言う再解析も行っていました。

私はすぐに、青函トンネルでは竜飛建設事務所副所長、鉄道建設公団海峡線部にて活躍された、我が母校函館工業高等専門学校の先輩に相談しました。すぐにデータを共有することになり、お互いに資料を読み込み、新しい地質の新事実も多く発見しました。
その資料から読み取った日本・韓国間の地形・地質の概要をまず説明します。
北西から南東に、韓国慶尚南道、日韓海峡ブリタニカ世界地図では朝鮮海峡、日本対馬海峡、長崎県・佐賀県・福岡県に至り、その韓国との国境手前に長崎県対馬が海上に隆起しています(図3)。

1200万年前ころ、韓国南~対馬周辺で、非常にねばりのある溶岩が噴火し、ねばりがあるので地上には噴出せず地下で冷えて固まり、ドームを形成して深成岩の花崗岩となり、その溶岩に熱せられた周囲の堆積岩が、熱変質ホルンフェルス化して非常に硬くなりました(図4)。これは既存資料の対州鉱山の地質調査記録と本資料の対馬と韓国巨済島のボーリング調査結果から読み取れました。

そしてこの地域は、日本列島形成の裂開造山運動に伴い(図5)、東へ移動するユーラシアプレートに引っ張られ、餅のように伸ばされました(図6)。

そこに、日本列島に南東から押し寄せるフィリッピン海プレートがぶつかり、太平洋プレートと激しい押し合いをすることとなり、大きく褶曲し隆起して対馬となり、対馬と韓国の間は大きく沈みV字谷となりました(図7)。このV字谷が、地球規模の海面上昇・下降の繰り返しにより、東シナ海の海流が日本海盆に流入する手前の三角堰となり、激流によって対馬側は垂直に削られ、V字谷には海流速が緩んで大量の土砂が沈降堆積したのです(図8)。

佐賀県唐津から長崎県対馬まで、既存資料、現地踏査、地質ボーリング調査から、佐世保・松浦層群~壱岐勝本層群~対馬対州層群と、泥岩・頁岩・砂岩が互層となった堆積岩層が広く分布しており、山岳トンネル工法に適し、対馬西から韓国までは、未固結堆積層が最深部で1000m以上堆積していることが再解析データから明らかとなり(図9)、泥水シールド工法で施工可能と思われます(図10)。

特にデジタルマルチチャンネル音波探査データの再解析マイグレーション処理によると、海底下200m付近で弾性波速度が1500m/sec海水と同等から2000m/sec近くの数値に変化しており、この層がトンネル建設に適していると特定することができました。

このように資料から読み取れる福岡から対馬海峡、韓国までの地形・地質を俯瞰して、トンネルルートの平面・縦断面線形を設定し、現地踏査を実施しました。現地踏査には経験豊富な専門技術者が何人か同行し、日韓トンネル技術委員会が始まりました。主に青函トンネル完成に大きく技術貢献した函館高専出身の青函トンネル経験者、専門技術者が主となって、現在、A・B2ルートにしぼり、日本側は長崎・佐賀と福岡、韓国は釜山近郊鎮海を車両基地として、詳細な計画・設計・積算を完了しています。

■プロフィール

竹石 峰也

タケイシ タカヤ
株式会社オーケーソイル参与
日韓トンネル技術委員会副委員長

1976年 国立函館工業高等専門学校土木工学科卒業、(株)フジタ入社
1980年 竹石設計事務所設立
1995年 日本基礎技術株入社、技術本部副部長、監査室長
2022年 株オーケーソイル参与