世界は駅 駅からドアトゥドアの移動サービス へ

みんなの未来構想

一般財団法人 計量計画研究所

理事 牧村 和彦

コロナ禍において世界ではモビリティ革命が加速し、これまでの駅から駅の移動サービスから、駅を経由したドアトゥドアの移動サービスが続々と誕生している。高速道路から始まるといわれる自動運転社会を強く意識し、カーボンフリー社会実現を先導する鉄道事業が目白押しだ。そこでのキーワードの一つがMaaSマースであり、移動産業のDXである。
既にコロナ前から、国際空港に降りたてば、次々に配車サービスに吸い込まれていく欧米人を尻目に、日本人は長蛇のタクシー待ちで途方に暮れているという笑うに笑えない話があり、主要駅に到着したVIP達は、次々に黒塗りの配車予約型高級ハイヤーに乗り継いでいく光景が日常となりつつあった。
コロナ禍では、ドイツDB、フランスSNCF、スイスSBBなどが、駅を介したドアトゥドアによる一括の予約決済が可能となる新たな移動サービスを開始しており、交通事業者自らが駅までのアクセスやイグレスの移動サービスを展開するところも現れている。また、駅のホームに降り、MaaSアプリを立ち上げた瞬間、まるでレストランのメニューを開いたように、現在地から利用できる様々な交通サービスが可視化されるバーチャルな世界も日常になりつつある。頻繁に起こるスト等に対しても他の代替手段を自ら選択できるサービスとして人気だ。
日本の鉄道サービスは紛れもなく世界でトップクラスである。ただし、改札を出た瞬間、日本を代表するような駅においても、タクシー乗り場が1レーンしかない、乗り継ぐバスと接続されていない等、目的地に向かう最後の一歩、次の交通手段との接点で残念な思いを経験されたことがある方は多いのではないだろうか?
今後、長距離需要や観光需要、インバウンド需要が一定水準には戻る時が訪れるだろう。また、わが国はいち早く高齢者の大量免許返納時代を迎えている。さらに、カーボンニュートラルへの対応は待ったなしであり、鉄道産業に再び主役の時代が訪れようとしている。モビリティ革命への備えは急務である。モビリティ革命のその先、チケットレスでキャッシュレスな世界が訪れた先には、様々な乗り継ぎの抵抗は薄れていく一方で、物理的な課題が一層浮き彫りになっていくだろう。バーチャルな移動サービスと合わせてリアル空間の価値創造、駅を介したドアトゥドアの良質な移動体験を官民一体で推進していくことが求められる。