アフターコロナの まち・交通・鉄道

まち

未来構想PF事務局長

土井博己

新型コロナウイルスが世界で猛威を振るっている。まだ出口は見えない。中国武漢から流行が始まったころは「撲滅」という言葉があふれていたが、現在は「共存」に変わってきている。そんな中、アフターコロナに関する書籍や映像が巷に溢れているが一つだけ共通の意見がある。

「社会や人の生活スタイルはコロナ以前には戻らない」

さまざまな意見や予測を以下に紹介する。

■社会、生活

○新型コロナは企業活動に大きな打撃をもたらし、一般市民の働き方や消費など生活様式も大きく変えた。一方、米中貿易戦争や地球温暖化など従来の課題も残ったままだ。

○この3か月ほどで急速にテレワークなどの新たなワークスタイルが定着し始めた。いつでも、どこでも、誰とでも仕事ができる環境と価値観が生まれつつある。通勤時間が余暇時間となり、家族とのコミュニケーションや趣味、地域活動など個々人の生活の豊かさにつながり始めた。

■まち(新しく生まれた価値観と共に、ゆるやかに、けれども確実に変わる国土構造)

○これまでの経済性・効率性・利便性だけではない居住地の選択が拡がり、3大都市圏に人口の約半分が集中している状況が変わっていくと考えられる。都市計画という観点からみると、これまでバラバラだった生活圏、商圏、医療圏、文化圏、通勤通学圏などの圏域を再編成し、生活に必須なライフライン、公共施設やサービスを自地域でいかに提供できるか、といった目線でのまちづくりが求められていく。

○東京圏の人口は、感染症があってもそう変わらないと考えている。ただ、山手線の内側や周辺にこれだけの人や建物が集まるという都市構造は、新型コロナを契機にちょっと遠のくかもしれない。これまで、都市間競争や都市再生というキーワードの下で、上海だって香港だってシンガポールだって、みんな超高層を競って建てた。それが、今は違うフレーズに入ったような気がする。

■交通、鉄道

○人によっては「通勤の未来」は「通勤しない」ことかもしれない。

○都市内や都市間輸送への影響よりも深刻なのが、地方の足を担う地域輸送への打撃の大きさだ。コロナ禍で移動自粛に伴う利用者数減、特に重要な収入源である通学輸送もほぼゼロとなっている。4月28日にJR東日本が発表した2020年1~3月期の連結決算は、営業損益が464億円の赤字だった。大手でも苦しい状況の中、交通事業者はこのまま移動自粛の流れが続けば規模にかかわらず危機的状況に陥る可能性がある。

○自転車レーンが永続的な好循環を生み出すと専門家は予測している。

○現状維持ではなく、新型コロナ収束後の社会の変化を見据えた交通体系の議論が必要である。