コロナ共存時代をどう生きるか
―仏教の教え「三密」とコロナ「三密」―

ひと

山本卓朗
未来構想 PF 会長

 

3 か月も自粛すれば、という期待は空しかったようである。コロナについて多くの研究がなされ、私たちも少しは利口になった。しかし肝心のワクチンの見通しが立たない以上、忍耐強く戦いを継続するしかない。しかも、更に邪悪な新々コロナの誕生が避けられないことも歴史が教えてくれる。

まさに「コロナ共存時代」の幕開けである。

疲労困憊しておられる医療関係者には、心からのエールを送る以外にお手伝いできることはないけれど、私たちシニアがなすべきは、長年の智恵を活かして未来を考え構想することであろう。不幸にしてコロナに捕まれれば重症 化を免れない私たちは、「三密」を避ける行動でわが身を守りつつ、頭を使うことで貢献したいと思う。深刻な状況の中で未来を拓くために、コロナ騒ぎで良かったことを探すことから始めたい。テレワークが進み始めたが、国際比較をすれば我が国の導入遅れは歴然としており、国際競争力のためにも全力で拡大すべきテーマである。鉄道事業にすれば、通勤客の減少を招くから痛し痒しだが、コロナと共存するためにも、本格的に満員電車から脱皮する機会ととらえたい。さらにテレワークは、長年実行できなかった地方分散を後押しすることに繋がる。マスコミ報 道によれば、故郷復帰を考える人々が増加しているとのこと。東京一極集中の危うさはコロナ 禍 でも実証されたし、再び地方分散に光があたるよう街づくり専門家の智恵に期待したい。もう一つ、今の段階で気が付いて良かったのは非常時の医療体制の脆弱さである。私たちは皆保険で、気安く病院通いをしている。その一方で、医療費の増大は深刻であり、病院は採算性の重視と効率化が求められてきた。つまり、ただでさえ忙しい平常時の医療体制では、パンデミックに対応出来ないことがはっきりしたわけである。コロナ共存に向け解決すべき最重要課題と思う。

さて「三密」について。ご存知の方も多いと思うが、「三密」という言葉は、特に空海の真言宗など密教の教えである。たまたまコロナ 禍 で、似て非なる「三密」が登場したことは偶然ながら感慨深いものがある。自粛を余儀なくされる中で、不安が増大するのは致し方ないが、 SNS 中傷が拡大し、医療関係者への差別が顕在化するなどは、コロナ共存時代で最も避けるべき事態であろう。そういう意味で、仏教の「三密」の教えを知っておくのも悪くない。以下、私なりの意訳である。

 

●身密(しんみつ)・・・体と行動について。健康を保ち、他人をおもいやる行動に努める。

●口密(くみつ)・・・言葉と発言について。感謝の気持ちを忘れず、他人を誹謗中傷しない。

●意密(いみつ)・・・心と考えについて。落ち着いて考え、正しい情報を得て正しく判断する。