鉄建建設 副社長
藤森 伸一
未来構想PF 理事
インドネシアが首都を移転することを計画している。大統領が移転先としてボルネオ島のカリマンタン州を選んだ。ジャカルタは人口過密で洪水などの災害が多く、広域人口3千万人が東京の1/3の面積に住み、世界最悪レベルの交通渋滞ならびに大気汚染の発生などが要因だそうである。2024年の移転開始をめざす。3.5兆円の費用が必要であり国家予算から2割を支出し、残りはPPPや民間に負担を期待している。果たして計画は進んでいくのであろうか。
ご存知のように他の国でも首都移転の例はある。ブラジルでは1960年にリオデジャネイロから新都市のブラジリアに遷都した。ミャンマーでは首都ヤンゴンから、新しい都市ネピドーを造り、2005年に遷都を開始し2006年に完了した。また、日本も都を移転してきた。藤原京から平城京へ、長岡京へ、そして平安京へ。また、明治維新により東京が首都になった。
首都機能移転計画が持ち上がり、議論がなされ2000年には候補地まで挙げられた。国交省のホームページによると首都移転の効果は次の通りである。東京中心の社会構造の変革として「東京を頂点とする序列意識の打破」、「地域の自立の促進」。また、「政治・行政改革の促進」、「危機管理機能の向上」、「内需拡大と経済活性化」などが期待されるとともに国土構造の改変として「東京の過密の軽減への直接的寄与」、「集中が集中を呼ぶメカニズムの打破」、「新たな極となる都市圏の創出と国土の再編」、「複合的な情報通信、交通ネットワークの形成」、「災害への対応力の強化」である。
2016年には文化庁を京都に移す方針が決定された。文化庁の組織体制を整備し、京都へ移転を行う計画である。東京一極集中の是正、文化の力による地方創生への寄与を目論む。2017年7月には地域文化創生本部が京都に設置された。移転の推進はここまでに留まる。
日本では首都機能の移転の話は膨らんでしぼんだ。機能の分散により、移転先の都市の機能が高まり、地方の自立が進むのは好ましい。丸ごとの首都移転とは言わないまでも一定の規模で機能分散することは地方の創生につながる。地方の整備や分散による課題やデメリットもあるが、ICTの活用ならびに新幹線やリニアなどの整備が進めば、時間距離も縮む。一極集中さらには高齢化が進む首都圏を考えるに文化庁に留まらず首都機能分散を一歩踏み込んで進めることが重要と思う。