インフラメンテナンス国民会議の動向

まち

シビルNPO 連携プラットフォーム常務理事

皆川 勝

シビルNPO 連携プラットフォーム(CNCP)では、2014 年から2015 年にかけて地域活動推進部門とサービス提供部門とが協力して、自治体のインフラメンテナンスに関する取り組が必要ではないかとの考えから、土木学会・教育企画人材育成委員会・シビルNPO 推進小委員会と協働で、国土交通省、自治体、NPO 等へのインタビューを実施しました。そこでは、中小の自治体では土木技術者も不在で予算も限られているなど、何らかの抜本的な解決が必要との担当者の多くの声がありました。そこで2015 年7 月には自治体インフラメンテ事業化研究会(現在のインフラメンテナンス研究会、以後、研究会と呼ぶ。)を設置し、さらに、個別地域の活動支援を目標に、研究を続けてまいりました。

一方で、国土交通省では、2014 年の年末から、社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会技術部会・社会資本メンテナンス戦略小委員会が、「社会資本のメンテナンス情報に関わる3つのミッションとその推進方策」(以後,推進方策と呼ぶ。)および「市町村における持続的な社会資本メンテナンスの体制確立を目指して」の案を策定しましたが、この動きに対して研究会では、NPO 等の「民」の参画が重要であることをパブリックコメントとして提言して、一部の意見が取り入れられました。

その後、前者の「推進方策」の中で、施策の実現に向け併せて実施すべき事項として挙げられた「インフラメンテナンス国民会議(仮称)」(以後、国民会議と呼ぶ。)の設置の動きが活発化しました。「推進方策」によれば国民会議は、「回り始めたメンテナンスのサイクルを着実に回すため、また、行政と国民、そして民間企業や大学等の研究機関、NPO などの多様な主体が社会資本の維持管理に向け理念
を共有し、力を結集し一丸となって取り組む」ことを目的として設置されるものとなっていました。

それを受けて2015 年末から開催された数度の国民会議準備会においては、研究会メンバーが参加して、市民、国民の関与に関する構想が全くなく、インフラメンテナンスのビジネス化の話に終始していたため、「国民会議」というからには産官学に加えて民の参画は不可欠であること、国民会議の方向性を議論する際には委員会方式でワークショップ方式を取り入れることを提案し、それが実現しました。そして、国民会議における7つの戦略の内、「国民へのメンテナンスの理念の普及」と「メンテナンスへの市民参画」が加えられる決定に大きな影響を及ぼしました。

このような経過を経て、2016 年11 月28 日に国民会議の設立総会が開催され、「実施要領」が承認され、会長に㈱経営共創基盤冨山和彦代表取締役CEO、副会長に政策研究大学院大学家田仁教授を選出し、その下での実行委員15 名が選任されました。

実行委員には、CNCP の研究会から小林大(大日本コンサルタント、広報部会リーダー)、鈴木泉(ガイアートTK,技術者育成フォーラムリーダー)、大島邦彦氏(熊谷組),皆川勝(東京都市大学、市民参画フォーラムリーダー)が選出されました。国民会議の趣旨に賛同する企業・団体・行政機関・(国の機関を除く)・個人による正会員は、年会費の徴収はありませんが活動に関わる経費は自己負担となります。
国土交通省は総合政策局が担当部局であり、国・国土交通省は伴走者として、国民会議の自立的な運営に至るサポートをすることになります。

国民会議は、産官学民のプラットフォームであり、様々な主体が参画し、理念の普及、課題の解決及びイノベーションの推進を図るものです。取り組みとしては、①革新的技術の発掘と社会実装、②企業等の連携の推進、③地方自治体への支援、④インフラメンテナンスの理念の普及、⑤インフラメンテナンスへの市民参画の推進が挙げられています。組織としては、実行委員会のもとに企画部会と広報部会を置き、また、自治体支援・海外市場展開・革新的技術・技術者育成・市民参画・近畿本部の各公認フォーラムを置いています。先行的な取り組みとしては、革新的技術フォーラムにおいては、①メンテナンス技術の提案・議論の場の提供、②企業マッチングをコーディネート、③技術コンペの実施に向けた検討が進められています。また、国民会議設立を機に、「インフラメンテナンス大賞」が創設され、国土交通省・総務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・防衛省が主催して、特に優れた取り組み・技術開発を表彰します。各省大臣賞を含む重みのある賞となっています。本年度の応募期限は過ぎておりますが、次年度以降、積極的な応募が期待されています。

小生が担当する市民参画フォーラムでも、図に示すように、産官学民による国民的運動として、インフラメンテナンスと市民参画の意義について市民が理解を深め、自治体が市民参画の意義を認識、各地域で市民と行政の協働が促進することを目標に、活動を開始してまいりますので、各位のご参加・ご協力を期待する次第です。

(東京都市大学)