“国際比較”を身につけよう

まち

未来構想PF 会長

山本 卓朗

ウィキペディアで「ガラパゴス化」を調べると、孤立した環境(日本市)で「最適化」が著しく進行すると、エリア外との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、外部(外国)から適応性(汎用性)と生存能力(低価格)の高い種(製品・技術)が導入されると最終的に淘汰される危険に陥るという、進化論におけるガラパゴス諸島の生態系になぞらえた警句である、と定義づけています。事例として、パソコン、携帯電話、デジタルテレビ、カーナビ、非接触カードなどが挙がっていますが、建設業の国際化の遅れも広義に見れば当てはまると言ってよいでしょう。すなわち、ゼネコンの再編淘汰が進んでいないこと、海外でも施工受注にとどまっていてフィービジネス体制が出来ていないこと、オールジャパン体制を求める成長戦略についていけないことなど国際比較をすれば歴然としています。お隣の韓国は成長著しく、建設業でも日本を凌駕しつつあり、もはや日本に学ぶものがないとの発言も聞かれる状況です。

なぜ日本がこういうことになっているかというと、高度成長で世界トップレベルの経済力を持ち国内消費が極めて旺盛で、原材料の輸入は別として、国内向け事業だけで十分食ってこれた、逆に言えば世界に出ていく必要がなかった企業が大半であったということだと思います。国鉄・JRなどその典型で、いまは新幹線輸出など力を入れているが、これからも財務的にはほぼ完全な国内産業であり続けるでしょう。その過程で日本の技術を世界標準として整備してこなかったから、EU など自らの技術を世界標準にして排他的にシェアを広げる動きに席巻され、四苦八苦する状況が続いています。私自身もその一員であったから、如何に自分がガラパゴス化しているか(国際化していないか)を痛切に感じています。

さて、本題の”国際比較”です。我が国の社会基盤は十分すぎるほど整備されているから、今後の投資は必要ない、という財務系からの強い意見があります。確かにそうだと首肯する向きも多いから、反論も簡単ではありません。しかし我が国の社会環境は真に豊かと言えるのか、今の社会基盤で激化する国際競争に対抗できるのか、宿命的な自然災害への備えはこれでいいのか、などの議論をするときに、では世界はどうなっているか、EU 諸国の考えや歴史的な背景は何か、我が国の整備状況は欧米と比較してどうなっているか、等々を”国際比較”しながら見て行かないと公正な意見を開陳することが出来ないのではないでしょうか。特に土木建設系の我々は、また公共事業を増やして仕事をしたがっていると言われてしまうこと必定です。一方、こういう国際比較できる資料やデータは、専門機関の統計や本や雑誌に多く載せられているけれど、いざというときに検索するのが容易でなく、苦労することも多いのです。

このようなことを考えて、当PF では、皆さんから将来ビジョンなどを考えるときに役立つ国際比較データを随時投稿してもらう事にし、過日関係する皆さんにお願いしたところです。私たちが興味を持つ分野に限っても、そのボリュームは無限大です。だからこの作業は泥沼に嵌るのではないかと懸念する声が聞こえますが、そんなに難しく考えないで、”継続は力なり”という自然な構えで続けて行こうと思います。常に国際比較で物を見る、考える、そういう癖をお互いに付けるようにしたい、これは一つの運動ではないか、と考えているところです。

プラットフォーム通信をスタートしましたが、この通信でも寄せられたデータから興味深いものをピックアップして随時掲載することも試みたいと考えています。