
鉄建建設㈱
代表取締役社長
今井 政人
地震・雷・火事・親父、この世で怖いものを例えた言葉です。最後の親父は「おおやまじ=台風がなまった言葉」という説もあり、まさに災害列島日本を象徴する言葉とも言えます。
これらの災害への対処(未然防止、復旧工事等)は、私たち土木技術者の大きな使命であります。私もJR、鉄建建設での勤務39年の間、災害との格闘の連続でした。地震としては、阪神大震災、中越地震、東日本大震災等、台風としては2019年の長野で新幹線が水没した台風19号等を経験し、対応にあたりました。その都度、被害状況を踏まえ、設計基準の強化、各種ハード対策等できる限りのこと
を実施してきました。
そのような中で、依然として災害は我が国に降りかかり、人的、物的被害が発生しています。最近、私が間近に経験した2つの災害について感じたことを述べていきます。一つは、2024年元旦に発生した能登半島地震です。被害のあった建物や護岸の復旧工事に現在携わっていることもあり、先日現地を視察しました。驚いたのは、被災から3年近くが経過していますが、復旧・復興はまだまだ進んでいないということです。輪島市長からは「住民の20%は域外に避難し戻って来ない」との話を聞きました。また、市内の朝市通りも被災後のまま建物もない状況でした。町の中には復旧工事に携わる関係者の姿は多く見かけますが、若い人、子供の姿は少なく、人口減少が進む地方での復旧・復興の難しさを改めて実感しました。二つ目は今年8月の千葉豪雨です。千葉市で1時間115㎜、市原市で24時間574㎜の雨量を観測しました。これは統計学的には1万年に1回の雨量ということで、千葉県に50年住んでいる私も初めて経験する豪雨でした。モンスーン
ジャイアという聞きなれない気象現象が関係しており、後日、気象予報士からは事前の予測が極めて難しかったとの話を聞きました。被害も「都市型水害」の典型的なもの(道路上での車水没や低い土地、建物の浸水等)であり、想定を超える雨量や突発性が被害拡大の原因と考えられます。今回の豪雨が地球的な気候変動に伴うものであるとしたら、1万年に1回ではなく来年もこの規模の豪雨が日本のどこかで発生する可能性があります。一方で、日本のインフラの想定雨量は1時間50~100㎜程度で設計されているものが大半であり、今回のような豪雨に対応するためのハード対策は一朝一夕に進められるものではありません。
9月の台風25号の豪雨被害に際し、元大阪府知事が「土木だけでは水を押え込むには限界がある」というようなコメントをしていました。今回2つの災害を身近に経験し、土木が主に担ってきたハード対策や復旧工事は勿論重要ですが、それに加え、社会的な誘導、予測・情報伝達の改善等のソフト的な対策を組み合わせて防災、復旧を行っていかなくては令和の「地震・雷・火事・おやじ」には対応出来なくなっていることを強く感じたところです。

