都市エンターテイメント、楽しみの予感

まち

三井不動産㈱ 建設企画部長
三井不動産エンジニアリング㈱
代表取締役社長 雨宮 克也

久しぶりにJR南船橋駅に降り立った。この辺りは三井不動産グループが事業を展開してきたエリア、船橋ヘルスセンター跡地に日本で最初の郊外型大規模商業施設、ららぽーとを開業したことに始まる。1993年に室内スキー場のザウスがオープン、やがて閉鎖。今その周辺はイケアやロジスティックパーク、アイスパーク(スケートリンク)となっている。今年新たに、ららテラスTOKYOBAY(駅前商業施設)とLaLa arena TOKYOBAY(大型多目的アリーナ)」が開業した。ららテラスの約5000m2の大規模広場空間、MIXI FUN PARKではフードフェスやスポーツイベントが行われる。アリーナは地元千葉ジェッツの本拠地、こけら落としはミスチルのライブだった。駅周辺のこれらの施設全体が、これから様々なスポーツや音楽、芸術の、まさに都市エンターテイメントの発信地となるだろう。
企業がスポーツを支援し、その拠点の街づくりを進めていくのは都市・地域戦略の王道であり、他の国でも同じだ。しかし、もし日本特有の、を見出すとするとやはり鉄道インフラの存在であろう。明治以降の近代化の中で、日本における鉄道の発展の先進性に疑問の余地はない。ただ少し境域的にみると、TODのDの対象としての都市エンターテイメント施設(スタジアム、アリーナ、コンサートホールなど)はやや取り残されてきた感がある(本年3月の本誌第124号、岸井先生のご指摘に同じ)。
コロナの時、もう人は都市に戻らない、とまで言われた。しかし戻ってきた。ただ、少し様子が違う。スポーツ、芸術、文化など、多様なリアルに触れることを求めて人は都市に戻ってきたのだ。都市の主役・中心がオフィスであった当たり前がいつの間にか変わった。コロナの混乱とその克服が、都市のあり様の転換を後押ししたようだ。
そうなると鉄道と駅、そして駅からの動線・ネットワークは、集散する人々を交通量として「捌く」だけの機能では不十分となる。これらは安全・安心を確保しながら、都市エンターテイメントの一部としてのデザイン・整備・マネジメントが期待されることとなろう。鉄道利用そのものが都市エンターテイメントとなるのだ。
ふと、シンガポール・チャンギ国際空港の複合施設、ジュエルの光景が頭にシンクロした。鉄道がスタジアムを通り車窓からグランドを見下ろし駅に到着。そこからウィンドショッピング、バーに寄ってビールを一杯、気分を盛り上げていよいよ自分のシートへ。
そんな都市エンターテイメント、楽しみの予感はやがて実感となるでしょう。