都市と鉄道の持続可能化

まち

富山大学教授(未来構想PF理事)
金山洋一

JRの前身である国鉄は、国民が25.5兆円を負担し1987年4月1日に分割・民営化された。「さようなら国鉄」といったテレビ番組などが特集され、サービス向上の期待感や、明るい未来に向けた出発を祝う報道が目立った。その後、大先輩をはじめとする皆様、関係者の努力により輝かしい成功を収めたが、他方、地方部では国民の期待との乖離も見られるようになった。運行サービスレベルの低下、廃線といった地方鉄道問題である。筆者は、2010年ごろ、勤務先がある盛岡駅から東北本線で一駅のところに居住していた。厳冬期に帰宅する際、列車を逃したため30分程待ち、ようやく来た次の列車は1両編成で車内は大変な混雑であった。このような沿線に住む人は増えるよりは減り、やがて、鉄道を必要としない都市構造になるのではないかと感じていた。
日本の人口減少問題は、やがては国家の存立に影響するとの見方もあるが、既に地方都市では「先進的に」人口が減ってスポンジ化が進行し、鉄道等公共交通を軸とするコンパクトプラスネットワーク政策が唯一と言える都市の生き残り策となっている。
富山市は、公費を用いて鉄道等公共交通の運行頻度等のLOS(Level of Service)を高め、利用者は大きく増え、沿線の住みやすさも向上し、コンパクトシティ化が進んでいる。しかし、他都市では残念ながら富山市のような成果はまだ見られていない。
鉄道は都市住民のQOL(Quality of Life)に関わる社会基盤であり、居住立地を促す効果(ポテンシャル)はバスより高く、また、通学との親和性も高い。鉄道を、人を運ぶ輸送機関としか見ていないと、判断を誤るおそれがある。例えば、路線の維持か廃線かの判断は、都市側の効果と負担も含め総合的に検討される必要がある。なお、線路があれば良いというものではなく使いやすいLOSであることが大前提である。地方都市の持続可能化は、鉄道にもプラスとなる。鉄道に関わる私たちは、国民と鉄道のため、地方都市との関係を進化させていく必要がある。