山本卓朗
未来構想PF 会長
一般社団法人「未来のまち・交通・鉄道を構想するプラットフォーム」は、2010年秋に設立されてから今年で10年の節目を迎えることとなりました。活動そのものは、個人ベースの手づくりでささやかなものですが、多くの皆さんにご理解いただいて今日まで来たことに心から感謝申し上げます。
国鉄からJRへと組織は激変し、私の仕事も建設から関連事業まで幅が広がりましたが、鉄道の将来計画を考えることが常に頭の中にありました。組織が民営分割されたとき、私の一番の懸念は、JR時代に社会人となった社員が地域JRの事しか考えなくなることでした。たとえJR東日本等の社員であっても、鉄道は全国と繋がっているし、自動車交通や航空を考えた施策は欠かせないわけで、将来計画というものは国全体を視野に入れてなすべきと考えています。当法人を設立するに当たって考えた名称は、鉄道を考える前に交通全体を考えよう、交通を考える前に都市全体を考えようと思ったためです。そのために長たらしい名前になってしまいました。
そしてこのような考えを少しでも伝えたいと始めたのが、現役の皆さんと一緒に“考える”、インフォーマルなワークショップでした。2021年から2018年まで仙台・高崎での実施を含め延べ18回まで来たところでちょっと立ち止まり見直しに入っています。一つはオリンピック対応の仕事が正念場に来たこと、そしてJRとなって30年、IT化が進み仕事の仕組みが国鉄時代と大きく変わってきた事が背景にあります。
もう一つ、法人を作ろうと考えた動機は、諸官庁や研究機関、民間他社との交流でした。国鉄時代は国や地方の機関で、盛んに将来計画を議論する計画研究委員会が実施され、若手技術者の交流と研鑽の場になっていましたが、昨今は情報管理やコンプライアンスなどで、おおらかな交流が沈滞してきたと思いました。そして自分がOB世代になり、インフォーマルな研究会等でその隙間を埋めることが出来ないかと考えるようになりました。この10年で前述のワークショップに他機関の方が参加したり、計画・交通研究会の諸先生にアドバイザーとしてご指導を得たり、駅周辺将来構想の研究会を起ち上げたり、多くの事例も重ねることも出来ました。
さて、東日本大震災から10年、今再び新型コロナという激動に見舞われています。まさに試練ですが、奇しくも未来構想PF10週年ということで、当組織もこのあたりで衣替えの時期にきたと強く感じています。
来春には、心機一転、JRはじめ若手の皆さんのご協力を得て、これからの活動を皆さんにご披露できるものと思います。引き続きお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。