未来構想PF会長
山本 卓朗
NPO 法人 シビルNPO 連携プラットフォームが発信するCNCP 通信で、一年にわたり明治150 周年特集として、月ごとに思い思いの記事を書いていただきました。日頃取り組んでおられるテーマ について、特に明治にこだわる事なく書きましょうということにしましたが 、皆さん何らかの形で、歴史的な考察など加えておられたのが印象的でした。
一方、未来構想PF では長年にわたり、未来の鉄道プロジェクトを構想するワークショップをJR の若手技術者と一緒に進めてきましたが 、未来を考える には 、まず過去を振り返ることから始めなければならない道理ですから、150 周年ということで様々な情報が得られるのは大変有り難いことです。
そしてその情報を、IT が大きく発展してきたおかげで、いともたやすく得る事ができるのも有り難いことです。しかしながら情報というものは、全てが客観的に、公平無私に書かれているわけではないので、日頃から自分で正しく判断するトレーニングも必要です。良く言われることですが、特に古代や中世の歴史は、為政者の立場で書かれているそうですし、近代史でも執筆者の歴史感や思想で書かれることも多いから、やはり自分の判断力を磨いておかなくてはと思います。幕末の歴史は今日でも、官軍と賊軍の呼び方がネット上で論争になったりするくらいですから、150 年という時間は、つかの間と言っても良いのかも知れません。幕末の歴史を違った角度から見るのに相応しい本があります。萩原延寿「遠い崖」、副題は英国公使館に長く勤務し日記を残したアーネストサトーの日記抄で、英国に保管されている外交文書を克明に調査して書いた全14 巻の大作です。著名な維新時代の活動家と外交官の出会いと交流も垣間見ることができる歴史書で、幕末史を外から眺めるという特異な体験が出来るでしょう。
土木学会100 周年事業では、100 年の歴史を検証して次なる100 年を展望するという膨大な作業に学会員挙げて取り組みました。土木分野全般にわたる総花的なレポートですが、100 年の歴史を紐解いて議論し、考察し、将来を展望した意義は大きいと思います。
一般社団法人「 未来のまち・交通・鉄道を構想するプラットフォーム」は 長たらしい名前で恐縮ですが、意図するところは、鉄道を考える前に交通を考える、交通を考える前にまちを考えようと。ミクロでなくマクロで。虫の目でなく鳥の目で。明治150 年を振り返るのも、それと同じ心と言えるのではと考えます。