1.はじめに
高田馬場については、JR山手線・西武新宿線・東京メトロ東西線の各線が乗り入れ、首都圏でも有数の乗降客を擁しながら、えき(交通機能)とまち(都市機能)の連携が不十分であり、両者の特性を生かし切れないなど、未だ多くの課題を抱えている状況にある。
未来構想PFでは、高田馬場駅周辺について、これまで指摘されてきた諸課題に加え、新たな潮流にも目を向けつつ幾つかの重要テーマを設定し、有識者・関係者が集い自由闊達に議論を展開するワークショップを企画した。
約1年間9回にわたるワークショップを経てまとめた下記の内容は、その要約と主たる視点・論点を明らかにしたもので、必ずしも結論に至るものは示されてない。今後のえき・まちづくりに携わる地元関係者・関係機関の方々の一助となり、高田馬場駅周辺整備がより良い進展をみることを期待したい。
2.構想のフロー
高田馬場周辺整備構想の動機となる地域固有のニーズやシーズに加え、新たな視点に着目し、検討を行った。
3.構想の視点1
高田馬場駅では、JR山手線・西武新宿線・メトロ東西線の乗換により著しい混雑状況である。各社の鉄道設備は老朽化しており、ホーム・昇降設備の施設容量やバリアフリーの観点で課題がある。
また、早稲田通りや戸山口通路などの東西軸についても狭隘であり、歩行者空間の再整備が必要である。その上で、メトロ東西線と西武新宿線の相直化の可能性を考慮し、ホーム拡幅やバリアフリー化などの駅や周辺設備の改良を検討した。
JR⇔西武乗換跨線橋の混雑
JRホーム上の混雑
バリアフリー施設未整備のJR戸山口
地上駅に接続していないメトロEV
狭隘な戸山口の東西通路
バス停や横断歩道で交錯する歩行者動線
西武新宿線とメトロ東西線との相互直通化の可能性
(出典:西武鉄道HP、東京メトロHP)
4.構想の視点2
高田馬場駅東側周辺では、シンボルでもあるBIGBOXの老朽化など、建物更新時期が迫りつつあり、近年まちづくりや再開発の機運も高まっている。
また、西武新宿線の高田馬場~中井間連続立体交差化や西武新宿~上石神井間地下急行線の都市計画についても、時代の流れや他連立事業の進捗により再整理を行う時期が到来している。このような状況を勘案し、駅周辺のまちづくりについて検討した。
BIGBOX高田馬場(1974年完成)
駅の顔が形成されていない早稲田通りの西側
再開発の機運がある駅の東側地区
駅と隔絶されている西側地区
西武新宿線高田馬場~中井間連続立体交差化の既都市計画(新宿区提供資料)
西武新宿線西武新宿~上石神井間地下急行線の既都市計画(新宿区提供資料)
5.まとめ
改めて高田馬場駅を見ると、乗降人員数で新橋駅より多いにもかかわらず、駅周辺商業施設は新橋と比べるべくもない。また、大手町駅からの所要時間は14分で、同等の表参道駅などと比べオフィス機能集中もきわめて弱い。西武新宿線沿線の代表的商業施設のビッグボックスは、機能的にも老朽化しており、沿線住民はバスや自動車で中央線沿線に出掛けることが多い。それでも、駅での乗り換えの不便さと混雑の現状は尋常ではない。
言い換えると、高田馬場駅と周辺地域、西武新宿線沿線は、大きく変身できる可能性を秘めているのである。そのキーになるのが、西武新宿線とメトロ東西線の相互直通化とJR埼京線新駅を含む駅の大改造、そして何より駅周辺地区の再整備である。
人口問題研究所と東京都による最近の人口予測では、東京ではまだ増え続け2050年まで今以上の人口が維持される。すなわち、駅の混雑は許容限度を超えるとの懸念から、都市再開発の最後のチャンスでもある。
渋谷や大崎、品川などJR山手線の駅周辺が大きく変貌しつつあるのに対し、この地域では小規模な開発が無秩序に広がってゆくのに任せていていいのであろうか。高田馬場駅周辺が今のよさを残しつつも、早稲田大学をはじめ学術・研究機能を集積し、より個性的・魅力的なまちとなり、西武新宿線沿線全体が生まれ変われるかは、地元の方々の意思にかかっている。