未来構想PF 会長
山本卓朗
一般社団法人「未来のまち・交通・鉄道を構想するプラットフォーム」は、2010 年秋に設立されましたが、この度遅ればせながらプラットフォーム通信を発行する運びになりました。この3 年間の活動として、JR 東日本グループの若手社員を対象としたワークショップ研修を中心に、連携する一般社団法人「計画・交通研究会」との交流などに取り組んできました。活動そのものは未だ試行的かつ初歩的ですが、自然体であせらず未来構想・ビジョンつくりを視野に、前向きに取り組んでいきたいと考えています。
さて2020 年の東京オリンピック開催が決定しました。私を含め招致は難しいのでは、と感じていた方は大変多かったと思います。しかし実現したことで日本全体が久々に明るいムードに包まれたことはまことに悦ばしいことだと思います。もちろん批判的な方々が多いことも承知しています。私の周辺では、無駄な公共事業がまたまた多くなって財政再建にマイナスである、東日本大震災の復興への関心が薄れ、事業の推進を停滞させるのでは、という意見が聞かれます。しかし、国際競争力の回復と経済の活性化を図り失われた20 年を取り戻す最大のチャンスが到来したと前向きに考えたいと思います。そしてマイナス面を危惧する方々の思いが杞憂で終わるよう合わせて努力することを忘れてはならないと思います。
1964 年東京オリンピックとともに東海道新幹線と名神高速道路が開通し、高速交通体系の幕明けを迎えました。特に新幹線は世界の“鉄道ルネッサンス”と呼ばれ、斜陽化する鉄道の奇跡的な復権に繋がりました。オリンピックという超ど級のイベントが、これをうまく活用すれば、国家経済や国際交流そして都市整備に大きな効果をもたらすであろうことは容易に想像できます。当時と比べ現代の日本はインフラ整備が格段に進んでおり、同じようなビッグプロジェクトが出現するとは思いません。しかし高度成長時代のインフラ整備は、お江戸日本橋の直上に高速道路を通したように性急な事業が多く、都市に多大なひずみを残しました。また上空には電線通信線がくもの巣のように張りめぐらされており、醜悪な景観となっています。しかしオリンピック、富士山の世界遺産登録などで海外から我が国を訪れる観光客が格段に増加するものと思われます。このような時代に合わせ貧しい都市環境を修復するプロジェクトは大変重要であり、その議論を盛り上げ、世界に誇れる美しい都市をめざしたいと思います。
オリンピックまで6 年という短い期間に整備することは出来なくても、この機会を最大限に活用して、20 年30 年先の日本を見据えた将来ビジョンを構想し実現していく努力が大切であると考えます。