未来構想PFの皆さま方にはいつも大変お世話になっております。
鉄道事業者としては、年末年始にコロナ禍が少し収まり、久しぶりに故郷に帰るお客さまの笑顔に接して張り切っておりましたが、その後はオミクロン株の急拡大が日本列島を襲い、非常に厳しいご利用状況となっています。
下を向いている場合ではありません。首都圏の鉄道建設プロジェクトを担当する立場としては、コロナ感染防止対策とプロジェクト推進の両立に細心の注意を払って、安全・安定輸送を第一に工事を進めることが地道な収入確保に繋がると考えています。
しかしながら、こんな時だからこそ、コロナ後の「未来を構想」した経営に資するプロジェクトの提案や、「未来を実践」する「DXの推進」による働き方改革や業務改革も重要な取り組みになってきています。
「未来を構想」では、少し大きく構えて、日本社会が抱える少子高齢化・都市と地方の格差拡大・国際競争に勝ち抜くまちづくり・環境・エネルギーなどの課題解決が、いずれ世界の課題を解決することになるという課題解決先進国の精神で、鉄道側から見た駅まち空間のあり方、交通結節点の工夫、地方を元気にするプロジェクト創造の検討も行っています。また、未来構想PFの活動の一つである「駅まち未来構想研修WS研修)」には、私たちの事務所からも若手精鋭社員が参加しています。有識者のご意見をいただきながら「鉄道と街の将来像~10年後の基盤創造~」をテーマに勉強中であり、年度末までに提言がまとめられる予定です。
一方で、「未来を実践」につながる「DXの推進」では、以下)の取り組みを実施しています。
①3Dレーザースキャナを用いた構造物出来形計測による検査業務の省力化と見える化した高度な出来形管理の試行(下図❶参照)
②三次元点群データ処理クラウドを活用した施工監理・安全管理業務の遠隔実施(2020年度より)(下図❷参照)
③調査計画・設計段階でのBIMモデル作成を原則化し、三次元データ(BIM・点群)を基本とした業務フローへの移行を推進(2021年度より)
④契約図書、図面、工事関係書類等の電子納品によるペーパレス化と活用可能なビッグデータの蓄積
⑤BIMクラウドを活用した自宅やサテライトオフィスなどでの非対面型電子稟議の実施
昭和世代の私たちにとって、「DXの推進」は働き方改革・業務改革の切り札としなければならないという「外的自己」と、充分に使いこなせていないという「内的自己」との間に葛藤があるものの、これらにより、設計、測量、契約、工事実施、社内手続きの大幅な業務効率化や生産性向上を図っています。引き続きICTやBIMモデル等を積極的に活用した業務改革に取り組んでいく予定です。
年末読んだ「自分の頭で考える日本の論点」(出口治明著、幻冬舎新書)によれば、「危機的な状況に接したとき、人々は往々にして『接線思考』に陥る。円の接線は少し円が転がると方向が大きく変わる。それなのに、今自分が立っている円周点の接線が、現状のままでそのままずっと続くと思い込んでしまう。マスク、手洗い、ソーシャルディスタンスというニューノーマルはウイズコロナの時代特有のもの。アフターコロナの時代になれば必要がなくなるが、人々はこれからニューノーマルがいつまでも続くと思いがち。(中略)遅かれ早かれウイズコロナは終わる。ワクチンや治療薬が開発されてアフターコロナの段階に入れば、接線の方向はビフォアコロナの時代と変わらず、世界は再びグローバル化に向かうと信じる。」と記載されてあり、前向きな勇気をいただきました。
コロナ後の反転攻勢を考えれば、「未来を構想」「未来を実践」の両刀遣いで、『接線の方向』を意識的に上げていくことが大切になると思います。シビルエンジニヤリングの精神を発揮して、身近な問題の解決だけを追いかける「内向き志向」にならず、中長期的な視点を持った「外向き志向」で取り組んでいくつもりです。
引き続き、皆さま方からのご指導、ご支援をよろしくお願い申し上げます。
JR東日本 東京工事事務所長
谷口 俊一