未来構想PF 理事
土井博己
■JR 北海道、5 線区311km 廃止方針
18 年3 月期決算で、営業赤字が過去最悪の416 億円と深刻な経営難に陥っているJR 北海道は、赤字の5 路線5 区間を廃止する方針を固めた。これらは1 列車あたりの平均乗車人数が10 人前後と少なく、バスに転換した方が利便性も高まることから、国と北海道は廃止を容認している。JR 北海道は早ければ年内にも廃止を決めたい考えだが、一部自治体との協議はまとまっておらず、同意が得られるかが焦点だ。
JR 北海道は、2016 年11 月に、全路線の営業距離の約5 割に当たる10 路線13 線区1237km を「単独では維持困難」と公表し、沿線自治体にバス転換や路線維持に向けた支援などの協議を申し入れていた。残る路線・区間については、国や北海道、沿線自治体の財政支援を得て存続させる考えだ。
■国は400 億円を支援、監督命令も
国土交通省は7 月27 日、JR 北海道からの2030 年度までの長期的な支援の求めに対し、20 年度までの2 年間で400 億円超の財政支援を表明した。支援内容は、
1.利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区の施設や車両の設備投資・修繕
2.貨物列車走行線区に必要な投資・修繕
3.青函トンネルの維持管理
4.経営基盤強化に資する前向きな設備投資(例えば新千歳空港駅発着の増便などの設備投資)
の4 項目で、その他、21 年度以降の支援や北海道新幹線の高速化についても引き続き検討することとしている。
一方、JR 北海道に対する監督命令では、徹底した経営努力による収支改善や他輸送機関との適切な役割分担による必要な輸送力確保に努め、地域において求められる輸送サービスの提供を的確に行っていくため、経営改善に向けた取り組みを着実に進めるように命令し、四半期ごとに監視していく。21 年度以降も支援するかどうかは、経営改善の取り組みしだいで、JR 北海道は、「北海道新幹線札幌延伸翌年2031 年度の経営自立」を最終目標に、徹底した効率化を実施するとしている。
□JR 北海道の経営問題
国は1987 年の国鉄分割民営化でJR 旅客6 社を発足させた。その際、赤字ローカル線の多いJR 北海道などのために経営安定基金を設けた。しかし、低金利を背景にJR 北海道の17 年度の運用益は当初の半分。差額243 億円は、純損失の2 倍を超える。JR 北海道は発足当初から多くの赤字ローカル線を抱え、経営は厳しい。線路や車両などの修繕・更新を先送りしてきたが、2011 年ごろから事故が頻発。その反省から「必要な安全投資を怠らない」方針に転換すると、年 400 億円を越す営業赤字を出すようになった。不動産などの「副業」でも赤字を補えず、高速道路網の整備や人口減少も経営難に拍車をかけている。JR 北海道は、このままだと国の財政支援が切れる20 年度以降に資金ショートし、列車を運行できなくなると説明している。
□地域の足を誰が守るのか、バス路線岡山の乱
今年2 月、岡山の大手バス会社が31 の路線を廃止すると国土交通省に届け出た。その後廃止届は取り下げられたが、国を相手に裁判を起こしている。バス会社によると、これまで黒字路線の利益で31の赤字路線を維持してきたが、1990 年以降の規制緩和で黒字路線に新規参入が相次ぎ過当競争となり大幅な減収になっている。地方の公共交通を維持するには過当競争を是正する法整備が必要だとの主張である。岡山市は協議会の場で議論を重ねているが、都市部の利用者の理解を得ながら地域の足を守る方策が見つかるか、全国の関係者が見守っている。
□人口減は共通の課題
JR 北海道の苦境の背景には人口減少もある。それは地方共通の課題だ。JR 四国の17 年度の純利益は前年より9 割少ない3 億円。鉄道などの運輸事業の赤字は100 億円を超える。JR 九州は博多駅ビルなど不動産事業に注力、16 年度に東証1 部上場を果たし、成功モデルとされる。それでも沿線人口の減少が激しい路線では運行本数を絞っており、こうした傾向は上場で先行した本州のJR 各社でもみられる。
日本全体の人口が減り続けるなかで高速道路の整備は進み、地方での鉄道離れは止まらない。どこまで支援すべきかという議論は、やはり経営難のJR 四国だけでなく、本州や九州にも多い赤字ローカル線のあり方につながる。大都市圏の利益で地方を支えるには株主の理解も必要だが、結論を先送りすれば、事態は悪くなるばかりだ。
鉄道政策に詳しい東京女子大の竹内健蔵教授は「民営化は経営努力を促したが、地域別に分けたことで人口減の影響が及びやすくなった。今後は本当に必要な支援を国がしつつ、市場原理とのバランスをとる必要がある」と話す。