建設業における働き方の大変革

ひと

鉄建建設(株)社長

林 康雄

 

建設業を取り巻く経営環境は震災復興、アベノミクス、東京オリンピック・パラリンピック等により、非常に好調な状態が継続しております。この状況はオリンピック・パラリンピックがある2020 年までは継続するもの思われます。どこの建設会社も目一杯の工事量を抱え、人手不足にきゅうきゅうとしている中、働き方改革というこれまでにない大変革を行わなければなりません。
このことは将来とも日本の基幹産業として建設業が生き残るための絶対条件であります。

私は鉄建建設に2013 年6 月に来て5 年弱経ちます。最も驚いたことは、建設業では週休二日制が全く確立されていないことであります。日曜日こそ休みになりますが、土曜日も基本的に作業所は作業を行っています。勤務割上は土曜非番で、日曜は公休日となっていて週休2 日制となっていますが、その通りに休んでいるのは本社・支店等の管理部門だけで、作業所は週1 回の日曜閉所だけでそれ以外の土曜・祝日は稼動しているのがほとんどです。したがって土曜・祝日は全て超勤対応となっています。4回の土曜出勤で40 時間程度の超勤がつき、平日の超勤と合わせると軽く一人60 時間~80 時間となってしまいます。鉄建建設の社員で昨年一年間の最大超勤時間は年間で1115 時間、月平均95 時間という人が居ました。

安倍内閣における働き方改革の一環として、建設業についても罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、5 年間の猶予はあるものの今後は一般規則が適用となります。従って建設業はこの5 年間の猶予期間において段階的に働き方改革を進め、長時間労働の是正と週休二日制の確立を行なっていかなければなりません。将来を展望した場合、若年層の入職が進まず、高齢層の大量退職も予想され、10 年を待たずに建設業の生産体制は破綻することが懸念されています。長時間労働を是正し、週休二日制を確立することは、今後の労働法制改定や建設業の担い手の確保という観点からは避けては通れない変革であり、なんとしてもやり遂げなければなりません。しかしながら建設業の現在の状況は、技術者も技能者も大変逼迫している状態であり、このような状況下で一人当たりの総労働時間を減らすことは、実際の工事の推進と社員管理を行なっている現場のマネジメントとしては非常に厳しいものがあります。

それを乗り越え改革を推進していくには、生産性向上が絶対条件であります。調査、測量、設計、契約、施工、竣工等あらゆる分野において、ICT技術や、IOTやAIの活用を図り、3次元データの活用、施工における機械化・ロボット化、プレキャスト化等ハード対策の他、書類の削減、立会いの省略等ソフト分野における対策も合わせて行い、生産性向上の成果を一つ一つ着実に積み上げて行くことが急務であります。また、労働日数の減少に対して、作業員の減収補償という問題も発生する他、発注者に対しては、工期の延伸や工事費増などを要請していく必要があります。いずれにしても発注者の理解と協力が必要であり受発注者が一体となった取り組みが必要になります。

特に鉄道工事においては、夜間、線閉・き電停止による施工のため、土日の施工が多く作業所の閉所を何曜日にするかという問題もあります。地域や作業内容によって鉄道事業者の対応も違ってきますので、個々の件名毎に閉所日の設定について受発注者間で合意をして進めていく必要もあります。

当社では鉄道工事が4 割強を占めていますのでその調整が大きな課題であります。ちなみに国家公務員の週休二日制がスタートしたのが1992 年(平成4 年)ですので、建設業は週休二日は30 年遅れとなります。いずれにしましても、2018 年は働き方改革のスタートの年であります。