スポーツと街づくりと鉄道

まち

 

(一財)計量計画研究所
代表理事
岸井隆幸

 

本年7月パリで五輪大会が開催される。パリ開催は1900年、1924年に続くもので、100年を経て3回目となる。前回の東京大会は無観客であったが、今回はセーヌ川を舞台に開会式が行われ、街を会場とした演出が期待されている。
これまでこうしたスポーツと街づくり・鉄道は大きな関係を有してきた。
例えば、戦前、関西私鉄沿線には様々なスポーツ施設が整備された。外国人対応、中等学校野球大会の人気の高まり、プロ野球・ゴルフ・ボーリングといった新しいスポーツの登場などを受けて、鉄道各社が競うように庭球場、野球場、総合運動場などを整備した。
鉄道会社のTOD施策とみることもできるが、同時に自動車がなかった時代、大観客を収容する施設では鉄道が不可欠であったと言えよう。実はこうした状況は今日でもそれほど大きく変わってはいない。大谷選手が所属するドジャーズの本拠地は56000人収容で、駐車場は16000台用意されている。仮に1台30㎡だとすると駐車場だけで48haが必要となり、わが国では容易に確保できる規模ではない。
また、近年、Jリーグ、Bリーグ、リーグワンなど新たなプロスポーツも生まれている。では、こうした競技のスタジアムはどこにあるか。実は多くの場合、運動公園、総合公園といった公的な施設の中に間借り状態で、市街地縁辺部にある場合が多い。スタジアムをできるだけまちなかに、という動きもあるが容易ではない。古くなった野球場を建て直して多目的に活用できないかというアイデアもあろうが、既に大阪球場、西宮球場は新しい商業系施設に取って代わられてしまった。せめてBリーグのアリーナぐらいは「まちなか」に設置したいが、残念ながら現在Bリーグのパートナーに鉄道会社の姿は見えない。
そろそろ今一度考えてみませんかねえ?
プロスポーツと地域の健康づくりを結び付け、高齢社会の中で沿線価値を高めてゆく、どこかで成功事例を創りだしたいものだと思います。