総合治水の取組

まち

㈱三菱地所
顧問(未来構想PF理事)廣瀬 隆正

2019年、台風19号などにより関東地方は大規模な風水害を受けた。この時、一社未来構想PFの林会長が公社土木学会の会長をされており、地球温暖化が進み、水害の拡大が確実視されることや大規模かつ広範囲な被災であったことなどから、通常、実施する水工学や土質工学等の分野別の被害調査に加えて、学会に所属する複数の分野の専門家で構成する会長直属の総合調査団が作られ、都市分野の専門家として私も参加することになった。
この調査結果を踏まえ、学会は翌年1月に提言を発表した。
http://www.jsce.or.jp/strategy/hagibis_20200123.shtml
この際、治水事業だけでは、被害の軽減は困難なこと、支川の合流点や橋梁付近など堤防の越流や決壊のリスクが高い箇所が明らかにもかかわらず、公表されていないことなどが議論され、単に地盤高を表示しているに過ぎないハザードマップにリスクを明示するなど高度化し、洪水対策を総合的に行う「流域治水」を提案した。その後、国土交通省は、大臣の指示を受けて、2021年に「流域治水関連法」を国会に提出、公布・施行した。その間や後も、全国で水害は発生、衣替えした学会の調査団に再び参加し、熊本県の球磨川流域や山形県・新潟県・石川県に調査に赴いた。
現在、これらの被災地の復旧について、流域治水の考え方に基づき、河川改修だけでなく、集団移転や調整地の新設、田んぼダムなど総合的に検討が行われている。一方、大規模な河川の上・中流域は、集落が河川沿いにあり、鉄道も河川を縫うように敷設されているため、橋梁が流されるなど大規模な被害を受けた路線も多い。これらの復旧に際しても、鉄道事業者だけでなく、流域治水のように総合的な地域の復旧・復興の中で議論されることが理想だと思う。