この度、2025年6月10日開催された未来構想PFの第15回通常社員総会・第17回理事会において、お亡くなりになられた林会長の後任として新会長に就任した中井です。
私は1953年生まれで1979年に日本国有鉄道に就職し、1987年にJR東日本に移籍、建設部門を中心に保守、広報、営業、そして海外鉄道部門など様々な部門を担当してきました。そして現在は日本コンサルタンツ㈱で海外鉄道業務に携わっています。趣味は林先輩の強い影響を受けた為か、登山とゴルフです。
さて、昨年、森地先生主催の海外の高速鉄道及び都市再開発調査でスペインを訪問し、スペインが国を挙げて交通インフラ整備やまちづくりに力を入れている姿に驚かされました。スペインの新幹線整備は近年急激に伸び、総延長は日本を追い抜き、中国に次いで世界第二位となっているのです。それまで私はてっきり日本が世界第二位だと信じ切っていました。また、日本で開発を諦めたフリーゲージの新幹線車両が既に開発・実用化されており、軌間の異なる在来線と新幹線の間の線路を、相互に停車することなくスムーズに運行し、時速300キロの速度で営業運転していました。
また新幹線ネットワークはスペインの首都マドリードの中央駅・チャマルティン駅を中心とし、各地方都市へ放射線状に延び、それらの地方都市と約2~3時間程度で結ばれていて、大変効果的に計画されていました。さらにチャマルティン駅には複数のメトロが接続し、約300haの大規模な駅周辺再開発計画が進行中であり、新幹線が接続している地方都市においても、駅からはメトロ、トラムなどが整備され、スペインのまちづくりに対する躍動感を肌で感じてきました。昨今、ともすると日本は緊縮財政でインフラ整備が思うように進んでいないように見受けられますが、このままだと日本のインフラは世界から取り残されてしまうのではと思った次第です。
この未来構想PFは産官学、現職OBといった壁を乗り越えて情報と技術の交流ができる場であり、将来のまち・交通・鉄道プロジェクトを目指し活発な議論を行う場だと聞いております。日本のまちづくり、鉄道技術が世界をリードしていくためにはどうあるべきかを議論するため、関係の皆様方のご意見を是非聞かせて頂ければと思っておりますので、今後とも一層のご支援・ご協力を宜しくお願い致します。
会長 中井 雅彦
2025年6月
今こそ未来を構想する活動を
「未来のまち・交通・鉄道を構想するプラットフォーム(略称:未来構想PF)」ホームページをご訪問頂きありがとうございます。
当法人は2010年秋に設立以来、若手鉄道技術者に先輩方の調査計画技術を継承していくこと及び将来ビジョンを構想することを目標に、実践的なワークショップを開催してきました。また毎月プラットフォーム通信を発行して、様々な情報や意見提言を提供する活動を行ってきました。私たちの活動は、小グループの手づくりによるささやかなものですが、講演会や見学会も少しづつ実施しています。
さて活動のポイントが二つあります。
まずは、未来のまち・交通・鉄道を構想することについて。
我が国が成熟社会となって成長が鈍化し、いま活動している現役世代の皆さんは、社会に出てからの大半を、失われた20年といわれる沈滞した時代を過ごすことになってしまいました。そして国の全総計画もなくなり、華々しく行われていた国や地方自治体の将来計画への取り組みもまた影を潜めています。未来を構想し計画するという技術は、長年の実践的な業務から身につくものですが、その学習する機会が失われていたことを意味します。国の将来を構想する意欲と、それを実行する技術がなければ何もできない道理です。なすべきことは多岐に亘りますが、私たちは交通計画を担ってきたエンジニアであり、まち・交通・鉄道を構想することに特化してやって行こうと考えています。
二つ目は、“非公式な(インフォーマルな)ワークショップについて。
かつては国や自治体が主導する様々な計画委員会があり、おびただしいレポートが生まれるとともに、若手技術者の研鑽の場となっていました。しかし現代は、IT技術の進展でネットによる情報交流が盛んになるのと反比例して、さまざまな制約の中で産官学の現役が集い研鑽に励む場を作るのが難しくなっています。企業活動においても、フォーマルな活動とインフォーマルな活動がバランスよく行われることで生き生きとした会社が生まれます。私たちは、インフォーマルなワークショップを計画することで、有為なエンジニアが個人の資格で参加できる機会をつくることを目指しています。
皆様のご支援を受けながら“未来を構想する”活動をサポートしていきたいと念じています。
代表 山本卓朗
2011年12月